小説部屋

俺と空と狐
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俺がソイツに出会ったのは19歳の時だった。その頃の俺の心は荒れて、同じような仲間と共に空を飛び回っていた。

他人に迷惑をかけることに何ら抵抗はなく、ただ自由奔放に好きな空を飛ぶだけの生活。


俗に言う暴走族という中に俺はいた。










「ファルコ、今日はどうする?」

「あー今日はやめとく。今金無くてよ」

「何だよファルコ。しっかりしろよな。何なら貸しといてやるぜ?」

「あーいい。あんま好きじゃねえんだ、そういうの」


その日俺のポケットには一銭も入っていなかった。毎日のように仲間と好き勝手飛び回っている俺に、食い扶持なんてない。
金を出してくれるような親もいなければ、心配してくれるような身内もいない。
金がなくなれば仕事を探して金を作る。それだけだ。


「ちっ。またバイト探すしかねぇか…」

家がない俺は、愛機の中で寝起きし生活している。家賃も払わなくて良いし、俺にとってはそれが一番ラクな手段だった。要るのは燃料と食料、最低限の生活用品。
あとは空と、一緒に飛ぶ仲間がいればそれで良かった。


「とりあえず腹減ったぜ…」

しかし今は体が空腹を訴えている。
俺はふらふらと街中を歩き、何かタダで食えるモノはないかと物色した。

「やべぇ…腹減りすぎて気力が…」

そういえば昨日から何も食ってねぇんだった。もっと早くバイト探しとくんだったな…。


今にも途切れそうな思考回路でのろまに考えていると、不覚にも小さな影にぶつかった。いつもならガンを飛ばし威嚇する俺も、今はそんな気力無くへたりと尻餅をつく。

あー…カッコわりィ


「大丈夫ですか?!」

ローブの間から差し出された手。それは細く、女のようだった。女にぶつかって倒れ、しかも手まで差し出されるなんて、だいぶイタいな俺。


「…大丈夫じゃねぇ」

せめて強気に出ておこうと、差し出された手を振り払う。こっちは死ぬほど空腹なんだ。しかしそのせいで立ち上がれない。

「すみません…。ケガ、されてるんですか」

俺は俯いたまま拒否したが、女は心配そうに伺う。
端から見れば異様な光景なんだろう。行き交う奴らはちらちらと俺を見る。
女に心配され、周りからはさげすむような目で見られる。
今すぐ立ち上がりたい。でも空腹で立ち上がれない。体の自由が利かない。それらは徐々に苛々と積もっていった。



「うっ…せぇ!!失せろ!!!」

俺は地面を見つめたまま、腹から絞り出すようにして怒鳴った。せめてこの場から消えて欲しかった。こんなザマをいつまでもさらすことが嫌だった。
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