小説部屋

鈍感な彼氏
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俺は今、目の前の男に物申したくて仕方ない。しかし、それは簡単に口に出しては言えないものだった。



「フォックス、この肉美味いぜ。じゃんじゃん食えよ」

「あ、ありがとうウルフ」

「やだフォックスったら。口にタレが付いてるわよ。拭いてあげるわ」

「えっ!い、良いって…!」

「遠慮しないで」

「そうだよキツネクン。いっそのこと俺が舐めとってあげようか」

「やっ!やめてくれ!オレそんなに子供じゃないしっ」

「そうムキになるとこも可愛いよキツネクン」




「つか、テメェらなぁ…」

俺は目の前の男よりもまず、目の前で繰り広げられているこの光景に黙ってはいられなかった。
なんで俺たちの基地で、

「のんきにバーベキューパーティーなんかやってんだよ!!?」

「あン?なんだトリ野郎」

「へぇ気づかなかったよ。いたんだトリ」


スターウルフのメンツを見た途端、俺は昼間から吐き気がした。無反応だが奥にレオンもいる。きれいに三人そろっていて最上級に胸くそ悪かった。

そんな俺の気も知らず、フォックスは俺に笑顔で駆け寄ってきた。

「やっと起きたんだなファルコ。
お前も一緒に食べないか?どうせ朝飯もまだなんだろう?」

屈託のない笑顔で話しかけてくるフォックス。ちくしょう。ムカついてんのに可愛いと思ってしまう俺が憎い。

「なんでアイツらがいるんだよ…。それに昼間っから敵の戦艦でバーベキューなんて、いったいどういう神経してんだアイツら」

敵地に居座って楽しくバーベキューなんて。普通では有り得ない光景。敵同士でこんなこと絶対にしない。少なくとも俺ならば断固お断りだ。

「悪いなファルコ。お前は嫌がると思ったんだけど、朝ウルフ達が野菜とか肉とか抱えて突然押し掛けてきたもんだから。
一様断ったんだけど、どうしてもって帰らなくて…。」

結局…とフォックスは俯き、すっかりしおれてしまった。どうやらフォックスもいつもの調子で体力を奪われているらしい。
まぁ、フォックスが押しに弱いのは分かっている。そもそもあの強情なヤツらにフォックスが勝てるわけがないのだった。

「仕方ねぇな…」

俺は内心舌打ちをしたい気分だったが、しおれたフォックスをみてすぐに気持ちを切り替える。


「分かったよ。けど、頼むからそういうときは俺を呼べ。少なくとも昼間っからバーベキューパーティーなんてことは避けられる。」

フォックスは一瞬呆気にとられたような顔をしたが、やがて苦笑した。

「そうだな」

「せっかくの休日が台無しだぜ」

不満を吐きつつ、つられて俺も小さく笑う。
フォックスはそういうヤツなんだ。だから俺がフォローしてやんなきゃなんねぇ。

「じゃ、ファルコには吐くまで食べてもらわないとな」

「あっ?」


フォックスは俺の腕をとると、楽しそうに室内へと戻っていった。


なんだ。満更でもねえんじゃねえかよフォックス。
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